黄易の小説の特色として、まず最も顕著なのは、歴史上に起こった出来事を武侠小説の背景としていることです。その主な理由としては、小説によりリアリズムを持たせるためです。実際のところ、もしリアリズムのない小説であったなら、単に侠客たちが殺し合いをするばかりで、明確な目標もなく、最後には何のために戦っているのかすら分からなくなり、読者は読み進む興味も無くなってしまうでしょう。短編である《破砕虚空》や《荊楚争雄記》、または長編の《覆雨翻雲》、《尋秦記》、《大唐双龍伝》など、いずれも史実がテーマになっています。これら物語の年代は、それぞれ春秋時代、戦国時代、隋の末期、元末、明の初期となっています。ストーリーは全て歴史上の出来事と関連があり、そのため、黄易の中編や長編小説のストーリー構成が膨大となっており、壮大な時間の流れやキャラクター数の多さからも、黄易の作家としての実力がうかがえます。 また黄易は、小説とは映画のようなカット割りの効果が必要だと考えています。読者は読み進むうちにまるで映画を見ているような、生き生きとした情景が思い浮かんでくるのです。そのため、普段あまり小説を読まない人でも、いちど読み出すと止まらなくなるのです。これも黄易の小説が成功している理由と言えましょう。 黄易の小説におけるもう一つの特長は、キャラクターについて、善玉と悪役の区別がつきにくいということです。これは現実の人生においても、一人の人間が本当に善良なのか、あるいは本当に悪者なのか、確定するのは難しいのと同じです。黄易はキャラクターを創作する際、ひとつひとるのキャラクターを忠実に描くように心がけており、いずれも一般人と同じように様々な感情を持ち、大侠客であろうがちんぴらであろうが、困難な状況に対しては恐れるし、美女を前にすれば鼻の下を伸ばすであろうし、ただ異なるのは、黄易によって描かれるキャラクターはそれぞれが自分の個性に合った方法で様々な困難を克服していくことなのです! 初期の頃の《破砕虚空》から、後期の《大唐双龍伝》、《辺荒伝説》まで、黄易が常に武侠小説に対して新しい定義を模索していることが見て取れるでしょう。それらの作品を見れば、最初のころのいわゆる「天の道」に対する追求から、後には生命に対する大きな関心まで、彼がいつも新しいものを創造していく努力を続けていることが分かります。このように、たゆまぬ創作の過程があることによって、今後もより多くの読者へ新しい感動を与え続けることでしょう!